■第3回 「日本はユリの王国」 | |||
ユリは人類史上最も古くから栽培された花のひとつとされていて、ヨーロッパで広く知られていた純白のマドンナ・リリーは紀元前1500年ごろの壁画にも描かれているそうですが、その後白ユリは「純潔」を表わす花、あるいは「聖母マリア」の象徴としてキリスト教と深いつながりを持つ花になりました。 このほかにもヨーロッパに自生するユリのうちの何種かは絵画や紋章のモチーフとしてしばしば登場しますが、園芸植物として広く利用されることはありませんでした。 日本には世界中に約100種あるとされるユリのうちの15種、それも花の大きさや色、香りなど、ほかの地域には見られない鑑賞価値の高い種類が自生していて、やはり古くから文学や美術に登場していますが、なぜか人々が身近で楽しむ園芸植物としてはあまり発展していません。 |
■マドンナ・リリー(Lilium candidum)は古くから知られたユリですが、原産地については諸説があります。日本では栽培がむずかしいくほとんど見られませんが、この血を引く園芸品種がいくつか登場しています。 |
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幕末以降に日本を訪れた欧米の博物学者やプラント・ハンターとよばれる人たちは、人里近くの山野に咲き乱れる美しいユリを見て驚嘆し、競ってその球根を本国に送っていますが、ヨーロッパでヤマユリやカノコユリの花が初めて紹介されたときの衝撃の大きさは、多くの記録に残されています。中でもテッポウユリはイースター・リリーの名で、急速にマドンナ・リリーに代わってキリスト教会にはなくてはならない花になり、日本の開国以降、太平洋戦争前まで毎年大量の球根が欧米に輸出されていました。 これらの日本のユリに欧米の園芸家たちは強い関心を持ち、園芸植物としての発展をめざして品種改良に取り組んだのですが、かなり近年まであまり大きな発展は見られませんでした。ところがバイテク技術や栽培技術の革新などもあって、この30年ほどで日本のユリを中心にした品種改良が一気に進み、一世を風靡した‘カサブランカ’をはじめ、最近切り花や球根が出まわっているユリの園芸品種のほとんどは日本のユリの血を色濃く引いているといっても過言ではありません。 |
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