■第4回 「伝統のアサガオとその仲間」 |
アサガオは日本の夏の風物詩として代表的なもののひとつですが、もともと日本原産のものではありません。 日本にアサガオがもたらされたのは、約1200年も前の平安遷都のころ遣唐使によって薬用として中国から紹介された、というのが有力な説になっています。 中国では種子を「牽牛子(けんごし)」の名で下剤として使われていましたが、原産地は熱帯アメリカではないかといわれています。 アサガオは江戸時代に園芸植物として日本で独自の発展を遂げ、いろいろな花色、葉形、葉色、さらには花型の非常に変わったものが次々に現われ、特に花型の変化はほかの花に例を見ないほど珍奇なものがあり、独特の世界を形づくっています。 |
大輪朝顔の展示会。このような展示会が全国各地で夏の間 開かれています。 |
▼伝統アサガオの系統 |
日本で独自の発達をした伝統的なアサガオは「大輪アサガオ」と「変化アサガオ」とに大きく2分されます。 |
大アサガオ輪 花の直径が20cmを越える大きな花を咲かせる系統で、花の色も濃い黄色以外のほとんどあらゆる色合いや縁取り、縞、吹き掛け絞りなどさまざま模様を持つ品種があります。
1mmでも大きく咲かせることを目的に技術を競い合ったり、必ずしも花の大きさにこだわらずに、たくさんの花を一度に咲かせて豪華さを競うなど、全国各地に長い伝統を持った愛好会があって、それぞれ独自の品種や仕立て方による鑑賞方式が成立しています。 |
大輪アサガオの品種「紫時雨」。さまざまな色模様のひとつです。 |
変化咲きアサガオ
花の変化の形は非常に数多くありますが、そのひとつひとつに名前がつけられていて、その変化を表わす遺伝子が存在します。 ひとつの花にいくつもの変化が重複して現われると花型は著しく奇形化し、とうていアサガオとは思えないようなものが出現します。 多くの場合、このような花の構造の変化を起こしたものは、雄しべや雌しべが花弁化して本来の機能を失っており、このような株から種子をとってその性質を維持することはできません。 そこで、外観では正常な花を咲かせるけれども潜在的に変化を現わす遺伝子を持っている株を維持してそれから種子を採り、次の代の中から少数の変化咲きを表わす株を選別して行くというたいへんな努力が必要になります。 現在ではこのような遺伝の法則は現代科学によってくわしく解明されていますが、何百年も前から経験則として伝承されてきたことはおどろくべきことです。 このような変化アサガオは静岡県内でも各地で愛好者によって保存され、8月を中心に小規模ながら展示会も開かれますから、実際に目にする機会もあるでしょう。 |
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