三輪先生のガーデニングABC
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  4. 第12回 いろいろな草花の原産地

■第12回 「いろいろな草花の原産地」

 最近の園芸店やホームセンターの店先に並んでいる草花の多種多様さは驚くばかりです。今まで目にしたことがないような、変わった花が毎年のように新しく登場しています。これらの草花は、もともと地球上のいろいろな地域に自生していた植物がもとになって、改良されたり、あるいはほとんどそのまま栽培に移されて増殖され、美しく仕立てられたり、時には苗や球根などの形で流通しています。現在では世界中のあらゆる地域の植物が園芸に利用されているといっていいでしょう。
 わたしたちは日ごろ、その草花がもともとどんなところに育っていたかということなど、あまり気にもとめずに楽しんでいますが、実はそれぞれの草花はもともと育っていた土地の環境に適応する性質を身につけていて、その性質は永年人間に育てられてきても失われていません。原産地が同じような環境であった植物はやはり共通した性質を持っています。ですから、草花の原産地の環境とそれに適応する基本的な性質とを理解しておけば、初めて手がける草花でも、どんな性質を持っているか、どんなふうに扱ったらいいか、ということを、あらかじめおおまかに推測することができます。
 信頼性のある草花の図鑑とか事典では、それぞれの草花の原産地が書かれていますが、それはこういった見方で利用してもらうための重要な情報なのです。
 原産地の環境にはさまざまな要因がありますが、もっとも重要なものは気象条件です。世界各地を気象の特徴ごとにいくつかに区分して世界地図を塗り分けることによって、遠く離れた地域を原産地とする草花でもある種の共通する性質を持つことが理解しやすくなります。ミラーという人は世界地図を極地を除いて、年間の気温と雨量の変化をもとに7つの気候型に塗り分けていて、これがもっとも広く受け入れられています。
 スペースが限られていますので、今回はそのうちの特徴的な3つの気候型と、そこを原産地とする草花の性質について取り上げてみましょう。ミラーの図を見ると、隣りあった気候型の地域は線で区切られていますが、もちろん実際にはそんなはっきりした境界線が存在するはずもなく、あくまでも目安に過ぎません。ここに示した図も、気候型の範囲はミラーと同じではなく、「だいたいこのあたり」という程度に理解してください。
A.地中海気候型
 草花の原産地としては地中海周辺とアフリカ大陸の南端部分が重要で、同じような気候条件の地域がオーストラリア南西部、南アメリカのチリの一部、北アメリカではカリフォルニアなどに見られます。雨量は年間を通して少なく、夏よりも冬に多くなります。冬が比較的温暖なことも特徴のひとつです。
 このような気象環境では、気温が高く乾燥する夏をいかに過ごすかが、植物にとって最大の問題で、樹木類では乾燥に耐える硬くて小さな葉を持った「硬葉樹」と呼ばれるものが多く、ゲッケイジュ、オリーブなどがその代表的なものです。草花ではおもに2つの生育パターンで対応していて、ひとつは雨の多くなる秋に種子が芽を出して、温暖な冬から春に生育、開花し、夏が来る前に種子を稔らせて植物体は枯れてしまう一年草と呼ばれる形、もうひとつは地下に球根を作って同じように冬から春にかけて生育し、夏には地上部が枯れて休眠する形です。
 地中海周辺原産の一年草にはキンギョソウ、キンセンカ、ヤグルマギク、カスミソウ、スイートピー、ストックなど、南アフリカのものはディモルフォセカ、ネメシア、ロベリアなど、おなじみの種類がたくさんあります。また、球根類では、地中海周辺にチューリップ、ヒヤシンス、スイセン、クロッカスなど、南アフリカにフリージア、バビアナ、グラジオラス、イキシアなど、同様に日本でも広く親しまれている数多くの種類が分布しています。
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株式会社アイ・アンド・プラス Bloom Field事業部