■第13回 「季節の花:クレマチス」 | |
クレマチスは古くから栽培されてきた花ですが、最近非常に人気が高くなっています。一般にはつる性の植物として知られていますが、実はつるにならない種類も少なくありません。また、花は初夏を中心に咲くものが多いのですが、いわゆる四季咲きや、中には冬の間に咲くものもあります。世界では約250もの野生種が認められていて、日本にも約20種が自生しています。 以前から一般に知られていたクレマチスは、いくつかの比較的少数の野生種をもとにして改良されたものでしたが、最近はこれまであまり注目されていなかった野生の種類や、その改良種などが紹介されるようになってきて、今までとはずいぶんイメージの違うたくさんの品種を楽しむことができるようになりました。クレマチスの人気の高さは日本だけのことではなく、世界各国で新しい系統や品種の開発が進められていて、日本からも優れた品種がたくさん世界に送り出されています。 |
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カザグルマ(Clematis patens)の自生地選抜系のひとつ。産地によって白から紫色のさまざまな花色や花型の変化が見られる。 |
古くから知られているカザグルマの八重咲き品種'ユキオコシ'。紫色の八重'ルリオコシ'とともに有名。 |
クレマチスのたくさんの品種はバラなどと同じように、その特性によっていくつかのグループに分けられています。グループ分けの考え方はいくつかありますが、交配親になった原種の系統別に考えるのが基本になっています。それは、茎がつるになるかならないか、花の咲く時期、花のつきかたなどの基本的な性質が共通するものごとにグループ分けしておくことで、植えた後の管理、特につるのせん定の仕方などの扱いが理解しやすくなるからです。 カザグルマ(Clematis patens)は浜名湖周辺の低山地にも自生が見られ、野生のクレマチスの中では最も大きな花をつける種類で、大輪系の園芸品種にはこれを祖先とするものが少なくありません。野生種そのままでも十分な観賞価値があり、自生地で選抜されたたくさんの品種があります。この性質を受け継いでいる園芸品種は「パテンス系」として分類されていて、前年のつるに多く花をつけ、比較的早咲きのです。 クレマチス・ラヌギノサ(Clematis lanuginosa)も中国原産のカザグルマに近い種類でやはり大輪の園芸品種の成立に大きな役割を果たしています。「ラヌギノサ系」の園芸品種はパテンス系に比べて四季咲き性の強いものが多く、今年のつるにもよく花をつけますが、開花はやや遅いものが多いとされます。 |
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国産の名花の一つとして知られる大輪の'柿生'。早咲きで、4月半ばには花が見られる。 |
'マダム・ファン・フーテ'('Mme Van Houtte')は「ラヌギノサ系」の非常に古い品種だが、現在でも白花ではもっとも代表的な品種。丈夫で花つきがよく、四季咲き。 |
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