三輪先生のガーデニングABC
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  4. 第14回 梅雨に似合うアジサイ

■第14回 「梅雨に似合うアジサイ」

 そろそろ長雨のシーズンを迎えます。この季節に似合う花といえば何といってもアジサイでしょう。アジサイは日本を代表する花のひとつで、ちょっとした山に入ると、日本中至るところで自生のアジサイが見られます。こんなことから、アジサイは古くから庭木として親しまれてきましたし、自然の中から花の美しいものが選び出され、たくさんの品種が知られています。

 欧米でもアジサイは注目されていた花のひとつで、幕末に日本に滞在して多くの日本の植物をヨーロッパに紹介したシーボルトが、日本人妻の「お滝さん」にちなんで、アジサイの学名をヒドランゲア・オタクサ(Hydrangea otaksa)としたことは有名な話です(この学名は現在は使われていません)。その後欧米では彼らの好みにあわせた品種改良が進んだ結果、派手な色彩の大きな花房をつける品種がたくさん生まれ、これらが逆輸入されて、英名(これは同時にアジサイの属名の英語読みでもあります)の「ハイドランジア」として、おもに鉢花として盛んに利用されるようになりました。しかし、最近はより日本的なイメージの、落ち着いた雰囲気を持った品種が好まれるようになり、日本で育成された品種の鉢花生産が多くなっています。
フラワー・ショウに展示されたアジサイの園芸品種
フラワー・ショウに展示されたアジサイの園芸品種。欧米で改良された華やかな色彩の大きな花房を持つものは、「ハイドランジア」とか「西洋アジサイ」などと呼ばれている。
西洋アジサイの品種 ユーロパ(Europa)
西洋アジサイの品種'ユーロパ'('Europa')。欧米でもアジサイは庭木として盛んに植えられている。
 自生のアジサイを見ると、一つの花房はまわりを囲むように目立った色彩の花がつき、その中にたくさんの小さな粒状の花が並んでいることが分かります。この粒状の花が「完全花」あるいは「両性花」といわれて、雄しべ、雌しべを持ち、実を結んで本来の花の機能を果たしています。まわりを囲む花は「装飾花」とか「中性花」と呼ばれ、生殖機能を持たず、昆虫などを呼び込むための、いわば広告看板の役割を持つと考えられています。園芸品種、特に欧米で改良されたものはこの完全花が装飾花に変わってしまったもので、このようなものは自生地でも稀に見られ、観賞価値が高いので古くから庭に植えられています。

 もっともよく見かける大きな花房を持った園芸品種のアジサイの主要な親になっているのがガクアジサイ(Hydrangea macrophylla f. normalis)で、装飾花が並んでいる様子を額縁に見立てたことからこのように呼ばれています。

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株式会社アイ・アンド・プラス Bloom Field事業部