■第18回 「スイセンの世界」 | |
これから植えて春に花が咲く球根の中で、スイセンはチューリップと並ぶ双璧といえるでしょう。チューリップのような華やかさはありませんが、高い香りを持つ種類も多く、わりあい丈夫で植えっぱなしでも毎年よく咲く品種もたくさんあって、手間いらずで毎年楽しむことができることはチューリップにまさる点といえます。スイセンというと、白や黄色のやや地味な花を思い浮かべる方も多いと思いますが、最近は品種改良も進んでピンクや赤に近い色の品種も現われており、花型もさまざまなものが見られるようになりました。今年はちょっと変わった花の球根を探してみてはどうでしょうか。 | |
スイセンはほとんどすべての野生種が地中海地方の原産で、例外的にただ一種、いわゆる日本スイセンがシルクロードを経て中国に伝わり、さらにわが国の海岸に渡来して自生するようになりました。わが国に伝わったのは人手による説と海流による説とがありますが、いずれにしても非常に古い昔のことであるのは疑いのないところです。 多くのヨーロッパ諸国では、スイセンの原産地なのに、特別に人気のある花ではないようですが、その中でイギリスでは原種のラッパズイセン一種しか自生していないにもかかわらず、ウエールズでは国花に制定されているなど、古くから非常に好まれる花のひとつで愛好者が多く、毎年春には各地で大規模なスイセンだけの品評会が開かれています。そのほか、アイルランド、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなどで栽培が盛んで、スイセン専門の農園や商社もたくさんあり、多くのアマチュアともども熱心に品種改良に取り組んでいます。 |
英国王立園芸協会のホールで開かれるスイセンの品評会。たくさんの出品区分が設けられていて、区分ごとに厳正な審査が行われる。 |
品評会に出品された純白のラッパスイセン、'ホワイト・スター'('White Star')。重なり合う丸い花弁とバランスの取れた端正な副冠を持ち、ショウ・フラワーとしての条件をよく満たしている。 |
ラッパスイセンの中でずば抜けて早咲きの'レインフェルト・アーリー・センセーション'(Rijnveldt Early Sensation')。花型は必ずしもよくないが、暖かい年には2月から開花するので、花壇用として優れた品種。 |
スイセンには非常に多くの品種があり、その数は万を越えているといわれます。もちろんそのすべてが現存するというわけではありませんが、このように数多い品種を整理するために、園芸の世界ではこれらを便宜的に花型などによって13のグループに分けて分類しています。 ラッパスイセンという名前はよく知られていますが、国際分類ではスイセン特有のラッパ(植物学上は副冠といい、一般には細長い形のものをラッパ、短いものをカップなどといっています)の長さが花弁(正しくは花被片)と同じかそれより長いものだけを第I類「ラッパスイセン」ということになっています。ラッパの長さが短いものは第II類「大杯スイセン」と呼びます。 大杯スイセンには副冠が長く突き出してほとんどラッパスイセンのように見えるものから、皿状に大きく開くものまであって、花型から受ける印象からはこの分類はちょっと違和感があるのですが、きちんとした品種のカタログやリストでは、国際基準に従っている限りこのように区分されています。 |
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