今年の冬は気候が不順で寒い日が続いたため、カワヅザクラなどの早咲きのサクラは、各地ともかなり開花が遅れていましたが、3月に入って暖かさが戻り、春の主役であるソメイヨシノの花芽も順調に育ってきて、ほぼ例年並みのお花見が楽しめるようです。
日本を代表する花といえば、サクラとキクが思い浮かびますが、キクがもともとは中国原産の植物であるのに対して、サクラは日本の山野に自生する種類をもとに、たくさんの園芸品種も日本で発達したもので、日本のシンボルとしてふさわしい花です。海外でも春の花木としてサクラは重要な地位を占めており、あちこちの公園や植物園で見事に花をつけている日本のサクラを見ることができます。
広い意味でのサクラの仲間についてみると、自生種の数は中国の方がずっと多く、日本に自生するのは9種に過ぎません。しかし、この中に鑑賞価値の高い美しい花を咲かせるいくつもの種を含み、しかも自生している山野や植えられた庭園で、これらの間に自然交雑が起こり、おびただしい数の園芸品種が生まれたことが、サクラを日本を代表する花に位置づけた大きな要因といえるでしょう。
数え切れないほどのサクラの園芸品種は、多くがこのように人手によらない自然の交雑の結果として生まれてきたもので、その起源などについては今でも議論が続いているものが少なくありません。人の手で意図的な交配が行われ、新しい品種が育成されるようになったのは、比較的近年のことです。 |