三輪先生のガーデニングABC
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  4. 第25回 草花の園芸分類、一年草や多年草

■第25回 「草花の園芸分類、一年草や多年草」

 植物図鑑が手近にあったら、開いてみてください。ひとつひとつの植物の種類ごとの説明文に必ず「一年草」とか「多年草」とかいった区分が書かれています。これはその植物がどんな生育習性を持っているかによって植物を分類したものです。「一年草」というのは種子が芽を出して1年以内に花を咲かせ、実を結んで一生を終えてしまう草をいいます。一年草のうち、秋に種子が芽を出して年を越して春に花を咲かせ、夏までには種子を残して枯れてしまうようなものはしばしば「越年草」として区分されることもあります。ただ、北半球ではそれでいいのですが、南半球へ行くと夏の間に新年を迎えますから、春に芽を出して夏に花の咲く草が「越年草」ということになります。
 種類数は少ないですが、「二年草」というのもあって、これは花を咲かせるまでの生育期間が長く、2年目にようやく一人前になって花をつけ、種子を実らせて枯れてしまう植物です。
ジキタリス また、「多年草」はたとえ種子から1年目で開花、結実しても、根株は枯れてしまうことなく何年も生き残って、毎年花を咲かせ、種子をつけることをくり返す草をいいます。
 いっぽう、園芸植物の図鑑や事典などを見ると、この分類区分はちょっと違ってもう少し細かくなっています。おもに野生植物を調べるための植物図鑑に書かれている分類は、外来植物は別にして基本的にはその植物がもともと自生している地域での生育習性によっていますが、園芸の世界では植物は自生地とは全く違う気象環境で育てられていますし、また人間の利用上の都合によって実際には本来の性質とは違った扱われ方をされる場合も少なくありません。このため園芸分類では植物学の分野での分類に加えて多種多様な視点で区分されています。実用に即したものである反面、非常に便宜的なものでもあります。ですから、人によって分類項目の建て方は細部では違いますし、同じ種類が別の区分で扱われることもあります。ここでは樹木類をのぞいた草花について、一般的に使われている区分を見てみたいと思います。
パンジー 「一年草」は毎年種子だけを残して枯れてしまいますから、これを育てるには種子からスタートするほかありません。園芸店などで絵袋に入った種子が売られているような草花はほとんどが一年草です。アサガオ、コスモス、サルビア、パンジー、ヤグルマギク、スイートピーなど、名前を挙げればおなじみのものがいくらでも出てきます。この中で、たとえばサルビアなどは、暖かい地方では霜で傷められながらも生き残って冬を越し、翌年も花をつけますから、多年草の性質を持っているのですが、みすぼらしい姿で冬を過ごしても老化した株では翌年の美しい花は期待できないので、実用上は一年草として扱われます。また、パンジーやビオラも強い品種や、北海道など夏の涼しいところでは夏も生き残ってさらに咲き続けますが、これらも実用的には一年草として毎年株を更新します。このように園芸分類では「実用」という観点が前面に出てきます。
 「越年草」という区分は園芸の世界ではほとんど使われず、「秋まき一年草」というのがふつうです。あるいはこれらは当然冬の寒さにある程度耐えるので、「耐寒性一年草」と呼ぶこともあります。
Bloom Field
株式会社アイ・アンド・プラス Bloom Field事業部