■第28回 「夏から秋のタネまき」 |
これから9月まで、まだまだ暑さが続きますが、そろそろこの冬から来春にかけて花を楽しむ草花のタネまきの準備をしなければならない季節です。 |
春から初夏に花を咲かせる草花の多くは、もともと一定期間冬の寒さに会うことによって花芽ができ、その後春になって日が長くなると花芽が成長して開花する性質を持っています。しかしパンジーなどのように永年人間によって改良が重ねられた最近の品種は、このような性質を失って温度や日の長さに関係なく、株がある大きさにまで成長すると花が咲くように変わってきています。 もともとの性質を強く残している種類の草花は、タネを早くまいても成長期間が長い分だけ株は大きくなりますが、花の咲く時期は早くはなりません。しかし温度や日の長さに関係なく花が咲くような草花は、早くまいてやればそれだけ早くから咲き始めることになります。 同じ種類の草花でも系統や品種によって性質が違う場合もあるので、このようなことを十分に承知した上でタネまきの時期を決める必要があります。 つぎに、植物のタネには芽を出すのに適した温度、「発芽適温」というものがあります。これは原産地の気候に合わせて、それぞれの植物が発芽後順調に生育できるような時期に芽を出すように、もともと持っている特性で、この性質は品種改良によってもあまり変わっていません。タネのまき時期を決めるにはこの点も十分考えておく必要があります。たとえばパンジーやビオラの最近の品種は、花を咲かせるために冬の寒さも春の日の長さも必要としないので、早くまいてやれば秋のうちから咲き始めますが、発芽適温が20℃以下と低いので、真夏の暑い時期にはふつうにまいたのではうまく発芽しません。 |
もうひとつ考えなければならない点は、それぞれの種類の寒さに対する強さ、つまり「耐寒性」です。冬暖かい地方ではあまり問題になりませんが、秋まきの草花の中には「半耐寒性」に分類される種類も多く、これらは強い霜に会うと傷んでしまいます。寒さで傷みやすい種類は株が大きい方が冬越ししやすいと考えがちですが、むしろ逆の場合が多く、冬囲いなどをする場合も株が小さい方が扱いやすいといえます。 一般的に秋のタネのまき時期はお彼岸ごろといわれますが、このようなことを考えるとパンジー、デージー、キンギョソウ、ストック、キンセンカ、アリッサムなど温度や日の長さにあまり関係なく咲く種類は早めにまいた方がよく、それだけ早くから咲き始めて暖かい地方であれば長い期間楽しめます。一方、ルピナス、スイートピーなどは早まきすると冬までに育ちすぎて寒い地方では傷みやすく、チドリソウ、ヒナゲシなどは発芽適温が低い上に春にならなければ咲かないので遅めにまくようにします。ただ、春のタネまきと違って、秋はどんどん温度が下がり日が短くなりますから、タネまきの10日の遅れはその後の生育の1ヶ月遅れにつながるといわれるように、やや早めにするように心がけます。 |
この続きは電子本でご覧いただけます。