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洋ランの中で最も生産量が多いのがシンビジウム(Cymbidium)で、その鉢花は贈答品の定番の一つにもなっています。1鉢か2鉢が窓辺やテラスに置かれているお宅も多いのではないでしょうか。シンビジウムは洋ランの中では和風の雰囲気を持っていたり、低温に耐えることなど、日本人の感性や住宅事情などに合った性質が親しみやすさにつながっているのだと思います。
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東京周辺より南の地方であれば、最近の温暖化も手伝って、ほとんどほったらかし状態でも、花が咲かないことはあっても枯れてしまうことはない、というぐらい丈夫なランです。
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シンビジウムの仲間(属)は熱帯アジアを中心に約70種が分布していて、日本にも10種ほどが自生していますし、中国大陸にも多くの自生があります。いわゆる洋ランの中のシンビジウムというのは、このうちのミャンマー、タイなどの高地に自生する植物体が大きく、大輪の美しい花を咲かせるいくつかの種を中心に改良されたものを指しています。
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日本に自生するシンビジウムの仲間で最もなじみ深いものはシュンラン(春蘭Cymbidium goeringii)でしょう。北海道から九州まで全国各地の開けた樹林の下草として、かつてはごく普通に見られたものでしたが、開発や乱獲によって、今ではなかなかお目にかかれなくなってしまいました。「ジジババ」とか「ホクロ」などの地方名も多く、花を塩漬けにしたものがお祝いの席などに出される「蘭茶」にも用いられました。
日本や中国に自生するこれらの種類は、自生株の中から選抜された花や葉の美しいものが古くから観賞対象になっていて、室町時代には大名家や寺院などで広く栽培されていたようです。江戸時代になるとほかの花と同様、その栽培が庶民層にも広がり、独自の世界を形づくるようになりました。
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