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第34回 シルクロードを旅したスイセン
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三輪 智
■第34回「シルクロードを旅したスイセン」
年末ごろになると、各地からスイセンの花便りが届くようになります。日本の、特に太平洋沿岸にはスイセンの自生地が多く、周辺を整備したり植栽を増やしたりして、観光資源として活用されています。花が少なくなる冬の間、長く咲き続けることや清楚な花姿、高い香り、それに何といっても丈夫でどんなところでもよく育つことから、街中でもわずかな空き地を利用して植え込まれ、昔から人々の生活の中にとけ込んでいます。
このように、多くの日本人にとってとてもなじみの深い花ですが、実はもともとは日本の植物ではなく、はるか遠い昔に中国から渡ってきたものなのです。中国ではスイセンが寒さに耐えて咲き、清楚な花と香りを持つことから、やはり古くから人々に愛され、さまざまな花の中の格付けも非常に高いそうで、「金盞銀台」などいくつもの雅名が与えられています。日本にもたらされた経緯ははっきりしていませんが、海岸での自生が多いことなどから、球根が海流で運ばれた、とする説が有力なようです。
ところが中国のスイセンも、もとを辿ると遠く地中海沿岸地方から、長い年月をかけてさまざまな文化とともに、シルクロードを経て伝わったものとされ、各地方の古い文学や美術の中に現れたものなどを根拠に、ほぼ定説になっています。古い時代に中国から日本に伝わって、あたかももともと日本にあったかのように、各地で繁茂している植物にはヒガンバナやシャガなどがありますが、交通の発達した現代ならともかく、はるかな昔に、しかも種子を作らないニホンズイセンが、おそらくは球根という形で1万キロを越える距離を運ばれてきたことには驚くほかありません。
「スイセン」というと、ほとんどの人がこの花を思い浮かべるでしょうが、スイセンの仲間(スイセン属:
Narcissus
)にはたくさんの種類があって、今回の話題はこのうちの「ニホンズイセン」です。
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