徳原真人のガーデニングABC
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ガーデニングABC

 第46回 春は足元まで

皆さ〜ん。春は足元まで来ています。

紅梅
写真1 紅梅

私はその時期に合った花を楽しむのが好きです。花と言わず自然そのものですね。仕事を戴いている会社や団地の方々から、「もう少し冬の花は色があるといいですね。」といった声を聞く事がありますが、私は枯れた庭の風景も好きですし、冬色のグレーと濃緑のツバキの木の傍らにちょこんと小さな花を発見する喜びもいいものだと思います。


ブログにこんな句を見つけました。
「梅一輪見つけし声の響きたり」
いろいろな情景が目に浮かびます。中高年の女性のグループが谷地の梅園を散策している所ですかね。あるいは落葉した雑木の公園の一角に添景木として植えられた梅の花を発見した瞬間でしょうか。
2月は少しずつ希望が膨らむ季節ですね。

早春の風景
セツブンソウ
写真2 セツブンソウ

2月3日は節分です。日差しを見るとずいぶん明るくなってきていることに気づきます。この時期に咲きだすのがセツブンソウです。セツブンソウは石灰岩質の落葉樹の下に咲くキンポウゲ科の野草です。図鑑などで調べますと、関東の栃木以西に分布とあるので、私の住んでいるあたりが北限なのでしょうか。写真2は石灰を産している葛生(くずう)の近く、栃木県星野遺跡にある「四季の森」のセツブンソウの群落で、2008年3月1日に撮影したものです。この辺ですと2月中旬から咲きだします。フクジュソウもキンポウゲ科の植物で花型もよく似ていますね。開花すると間もなく葉を展開して、落葉樹の若葉がうっそうと茂る頃になると地上部が枯れて休眠に入ります。従って、夏場日陰で涼しくなる落葉樹の林床に植える事をお薦めまします。

ロウバイと紅梅の咲く散策路
写真3 ロウバイと紅梅の咲く散策路

私はキンポウゲ科の植物が大好きです。シュウメイギクやクレマチス属のセンニンソウ、クサボタンなども丈夫で育て易く、ぜひ、庭の隅っこに植えたい植物です。 写真3はこのセツブンソウの咲く星野、四季の森の1月31日の風景です。今、紅梅や蝋梅が見ごろで、2月10日くらいから白梅やセツブンソウなども加わってとってものんびりした牧歌的ないいところです(写真4)。写真5は、同じアングルを2008年の4月1日に撮影したものです。10月のコラムに「デザインも自然に学べ」と言う記事を書きましたが、これから4月下旬までを撮りためて、自然景観の移り変わりを写真でお届けしようと思います。

写真4 1月31日ロウバイと紅梅が、見ごろ。ヤブツバキは1分咲き程度
写真4 1月31日ロウバイと紅梅が、見ごろ。ヤブツバキは1分咲き程度
写真5 4月1日の写真。ヤマザクラ シダレザクラ トサミズキが五分咲きを超えている。手前の草地の緑を吹き返している。黄色く見えるのはサンシュの木
写真5 4月1日の写真。ヤマザクラ シダレザクラ トサミズキが五分咲きを超えている。手前の草地の緑を吹き返している。黄色く見えるのはサンシュの木

早春の思い出

コラムを書いているうちに、少しずつ子供の頃を思い出しました。私は栃木県の山間地で生まれ育ったものですから、よく遊んだ里山の雑木林が目に浮かびます。この時期、日中になだらかな南斜面に出かけると、ポカポカと本当に暖かいのです。日だまりという言葉がぴったりで、よく子供同士で落ち葉にくるまって遊んでいました。薪炭材となるコナラの株の足元にはシュンランが生えていました。シュンランの花をジジババと呼んでいましたが、この時期細葉の間から花芽を覗かせています。当時は、雑木林の落葉は堆肥の材料として集めて利用していましたから、林床はネザサなどのブッシュがきれいに刈りはらわれて見通しが良く、燦々と陽が差してとても気持ちいい場所でしたね。

冬から春に移り変わり行く、上手なガーデニングテクニック

冬から春へと移行していく時期のガーデニングについて少し話したいと思います。シクラメンといえば、クリスマスや暮れの花の印象が強いようですが、実際には、年明け以降も4月上中旬までずっと咲き続けます。近年ガーデンシクラメンと称して、耐寒性があるミニ系のシクラメンが出回っています。注意しなければいけないのが、さほど耐寒性がないものもガーデンシクラメンというラベルで売られているので気をつけてください。 経験から言うとマイナス2℃程度までは大丈夫のようですが、私の住む地域ですと−5℃くらいに冷え込むので路地での植栽は無理の様です。

写真6 シクラメンとデージー
写真6 シクラメンとデージー

右の写真は横浜市の花壇です。寒くなる11月上旬までに植え付けます。この時期は地温があるので暮れころまでに根が地に伸びて、冬の乾燥と寒さに耐えられるようになります。花柄を摘んでやる事で、次々と花が継続し思った程手間がかかりません。でも、11月〜12月に店頭に並ぶ頃は少し値段が高いので、全面シクラメンの植え込みというわけにはコスト的にいかないと思います。そこで私は、シクラメンの株間にパセリを挟み込みます。単位面積当たりの植付け本数を減らす事が出来ますし、周りに緑があるとシクラメンの花が美しく見えます。

写真7 シクラメンとパセリとビオラと玉咲きナデシコ(シレネ)の混植
写真7 シクラメンとパセリとビオラと玉咲きナデシコ(シレネ)の混植

写真6の様にデージーと混植(ランダムミックス)しても美しいものです。また写真7はビオラと玉咲きナデシコ(シレネ)を混植しています。ビオラやシレネは意図的に花芽が上がっていない幼苗を植え付けます。これは、シクラメン→ビオラ→シレネと11月〜5月上旬までだんだん次の花がピークを向かえるように設計してあります。私の感覚から言いますと、これでも少々色がきついくらいです。住宅地の花壇や商業施設の花壇などで植え付ける場合は、色がはっきり出ていなと減り張りがきかなくてぱっとしないというのが一般的な印象のようです。


一度、イタリア中部の城郭都市アッシジで見た事があるのですが、シクラメンの原種は日本のスミレの様なイメージでもっと楚々と咲くイメージでした。日本の住宅の庭で言うと、エゴノキやジューンベリーなどの落葉樹の下に10株/uくらい植えればよいのではないかと思います。ビオラのソルベYTTとかペニーイエローブロンズなど小花の淡いやさしい花やヒナソウとの組み合わせなんていいと思います。上の写真の様にパセリなどのグリーンものを植えずエゴノキやジューンベリーの落葉をそのまま残して、マルチングしておくとよいと思います。樹の枝が張っていて、夏場林床が日陰になっていれば、フクジュソウなども適した環境です。

写真8 プリムラ プラエニテンスの銅色がかった濃緑花や後ろのペイステモン ハスカーレッドの紫葉との組み合わせが白い花をより引き立ている。
写真8 プリムラ プラエニテンスの銅色がかった濃緑花や後ろのペイステモン ハスカーレッドの紫葉との組み合わせが白い花をより引き立ている。

最後にお薦めしたのが写真に示すプリムラ プラエニテンスです(写真8)。チュウカザクラやチャイニーズプリムラなどと言われていますが、とても寒さに強く落葉樹の林床ですと夏越しもできる宿根草です。葉がやや茶色味がある深緑色なので、白の花が引き立っていて上品なイメージがとても好きです。
あと1カ月たつと外気温も上がり、エンジョイガーデニングの季節がきますね。春は足元まで来ています。


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