第48回 春の足踏み |
今年の桜の開花は早いのではと言われていましたが、このところ足踏みをしています。29日の晩には霜が降りて、かなり冬に逆戻りをしたような感じです。 右の写真は、とちぎわんぱく公園の4月の写真です。コナラやシデ、ヤマザクラなどの新芽が吹き出すころです。萌木色という表現がありますが、新芽が赤味を帯びたりペパーミントグリーンになったり、モスグリーンになったりと小刻みに変化するとても楽しい時期です。 私はコンテナの寄植えをする場合でも、庭づくりの時も背景の扱いを大切にしています。当然住宅の庭でも同じことが言えます。自然のものであろうが人工景観であろうが、周辺の景色をうまく取り込むと空間に奥行きを感じます。また、結果的に使用する植物の材料を減らすことが可能です。 特に背景が雑木である場合には、冬から春の時期は林床が見えます。林縁や林床にスイセンやキンポウゲ科の植物などは良く似合います。まだ、寒さの残る3月頃は目線を遮る植物は少ないですから、ずっと奥のほうに視線を誘導することが可能で、その為に奥行きを感じさせることが出来ます。 キンポウゲ科の代表選手としては、フクジュソウやセツブンソウ、ガーデニングの材料で言うとアネモネの各園芸種などはお手ごろです。少し中級者ですとアネモネ シルベストリスなどは最近人気の植物だと思います。 初心者を対象にした園芸講習会を引き受けると、4月、5月になるとスイセンの葉が大きく伸びすぎてしまうので切っても良いですか という質問を受けます。答えは、×です。 スイセンの花が終わると5月の中旬ころまで葉を大きく広げて盛んに光合成を行い、出来た養分を球根に送り込んでいます。葉がやや黄色味を帯びてくると、来年花を咲かせる栄養を球根に送り込んだので、スタンバイですよ、というサインです。 落葉樹が芽吹き5月のゴールンウィークを過ぎると、林床や林内が見えていた背景は徐々にみどりのスクリーンが作られてきます。少し日中汗ばむ季節ですね。この時期になると、デルフィニウムやラークスパーセリ科のホワイトレースフラワーやオルレア等の白や薄紫の淡い高性の花が似合います。みどりの濃い背景が作られていると、とても映えます。 昨年の秋以来「デザインを自然から学ぼう」と言ってきましたが、自然のものと人工のもの、或いは作為的なものを対比して観る習慣をつけると、理にかなった良いデザインを身に付けられます。 散歩をしていて気付くことは、ニリンソウやセンニンソウ、クサボタン(キンポウゲ科クレマチス属)などキンポウゲ科の植物は林縁に似合う植物です。事実、自然の中ではそのような立地に生育していますので、住宅の庭の似たような環境を探すと良いでしょう。 春は光の波長の関係で黄色い花や白等の淡い花が多いですね。低木から中高木で言うと、ヒュウガミズキやシデコブシの花木がとても愛らしくて、大好きですね。特にシデコブシはあまり大きくならないので住宅の庭に向くし、夏期に葉が多く茂らないので樹下に草花を植えるのには良い環境なので特におすすめです。 コブシやオガタマノキなどマグノリア属の植物は多くの魅力を持っていますが、樹高が高く葉が大きくなる種類がほとんどです。その点を考えるとシデコブシをおすすめしておきます。春のラークスパーや夏のユリ類などの組み合わせはベストミックスだと思います。 これから、小刻みに季節が変化していきます。 |