関東地方では2月29日に雪が降って3月1日の朝は雪景色です。今日から暦の上では春ですが、まだ寒さは残りそうです。友人の電話だと東海地方は大変暖かいと昨日言っていました。これから一雨ごとに春に向っていくといいですね。
1月から2月の上旬にかけて、都心でスモールガーデンの改修工事を1つやりました。
今まで手がけた庭の中で、最も小さい部類のアプローチガーデンではないかと思います。
右の写真を見てください。
幅2.3メートル、奥行き10メートル足らずの玄関にアプローチする玄関庭(アプローチガーデン)です。いわゆる旗竿型の宅地です。クライアントさんは非常に植物好きの方で、自分で少しずつ植栽を進めてきたようです。
10数年前に植栽したオリーブの木とゴールドクレストの樹木が大きくなりすぎて、うなぎの寝床型の敷地に日が差さなくなってしまっています。しかも、アプローチの枕木の園路が腐りかけてきて、部分的に歩きづらくなってきています。好きで集めた鉢植えの植物も多くなり、高木の剪定などと合わせて自分では手に負えなくなってきたようです。
私に相談があった場合、まず依頼主の思いと意図を十分に聞くように話を進めます。この段階では、いっさい図面や絵を提示しません。 設計に入る前に2つの点を十分に聞きだします。
1. 庭にどの様な価値を置いているか。
2. どの様なスタイルの庭(空間)にしたいのか。
1は設計のコンセプトに係わる部分で、庭に期待したいことの優先順位をつけて整理していきます。
2はリニューアルしたいイメージですね。お客様が良いと感じた庭の写真とか、外国で見た庭のことなど絵でも言葉でも自由に十分語ってもらいます。
この2つの作業をクリアにすることで、設計方針と庭にスタイルや領域の取り方が浮き上がってきます。後は、日常の使い勝手のことをお聞きすると納めのディテールが決まってきます。
今回は、緩やかにワインディングするアプローチやバラのトレリス、スチール製の物置を隠し、且つラティスパネルやルーバーや梁にツルバラを絡ませて、あたかもバラの為に作ったようにしようということになりました。
そして、植物好きのクライアントさんが草花のガーデニングを楽しめるよう、地面に日が射すように明るい雰囲気のアプローチガーデンにしようということでプランがまとまり、工事にかかりました。左の写真は、園路にコンクリートのスラブを打っている段階の写真です。
右側にスチール製の物置がありますね。玄関を訪ねたお客さんが、直ぐ目に入ってしまうポイントとなってしまうため、どのように溶け込ませようかと言うのが課題でした。生活の中で是非必要な物で、他に移すということも出来そうもなかった事情があります。
右の写真は、竣工直後の写真です。全体に明るくなったでしょう。物置も気にならなくなったし、物置の手前には同じようなモジュールでポンプカバーも設置しました。上に花鉢でも置いてもらうと、良いフォーカルポイントとなります。
アプローチの園路は、オレンジ系の豆砂利の洗い出しに自然石とグレーの小舗石を組み合わせました。取り付け道路から玄関前のテラスまで緩やかなスロープで、十数年後の生活スタイルに対応できる可能性を持ち合わせた設計としました。この庭は狭いだけに、花木やバラを3次元で立体的に配置し、ストラクチャーをダイナミックに組み立てることと、園路の付け方がポイントだと思います。
先日誘引したトレリスのバラが咲いたころに、施工後3ヶ月の景観をご紹介できるのではないかと思います。
いろいろな素材の園路
さて園路ですが、使う材料によって随分と雰囲気が変わってきます。磁器や陶器を焼く釜に使用された耐火煉瓦(写真下)は、なんともいえぬアンティークな雰囲気を醸し出します。様々な色合い・テクスチャーとサイズがあります。
下の写真は、レンガに陶器の釉薬が垂れ落ちて、面白い風合いを醸し出しています。その他、大きいものやら非整形の耐火煉瓦など本当に味のある路材です。
耐火煉瓦のいろいろ | 耐火煉瓦 緑の釉薬付き | アンティーク調の耐火煉瓦 | 大判の耐火煉瓦 |
右の写真は、我家の園路で野面の自然石と上海レンガを斜めグリットに組んだものです。
石の間に見えるグリーンはスナゴケです。
いわゆる徳原流の「和と洋の融合デザイン」ですね。
左の写真は、コッツウォルズ調の庭を造ったお宅のヨーロッパで使用されていた小舗石を貼った園路です。日本で売られている小舗石に比べると一回り大き目ですね。何と言っても表面がまるく削られている風合いが魅力です。
ちなみに私の好きな園路(道)は、クローバーやニワセキショウなどが両脇に生えた砂系の土の道です