三輪先生のガーデニングABC
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  4. 第17回 これから植えて秋に咲く球根草花

■第17回 「これから植えて秋に咲く球根草花」

 暑かった夏も終わり、秋風が立つころになると、園芸店にはたくさんの種子や球根が並べられて春の準備が始まります。これから植える球根草花はチューリップやスイセンなど、長い冬を通り過ぎて春に花の咲くものが多いのですが、中には夏の終わりから秋の初めにかけて植えつけると、秋のうちに花茎を伸ばして花が咲いてしまう種類も少なからずあり、最近ではこのような球根を店頭でもかなり見かけるようになりました。
 球根草花は一般に植え付けの時期から、「春植え球根」と「秋植え球根」とに大きく分けられることが多いのですが、秋に花を咲かせるこのようなグループを「夏植え球根」として区分することもあります。春に花を咲かせる球根草花は、ふつう冬の寒さを経験することによって花芽が正常に発育するのですが、秋に咲く球根草花の多くは秋になって涼しくなってくるだけで、あるいはそれに加えて水分を与えられることで、花芽が発育するような性質を持っています。
 秋に咲く球根草花は、植えつけてから短期間で花が咲くので、手っ取り早く楽しめるよさを持っていますが、種類によっては、気温が下がってくると、球根に蓄えられているエネルギーだけで一気に花茎を伸ばしてくるものがありますから、うっかり植え忘れたりしていると、ほんの数日の間に袋の中で花芽がモヤシ状態になっていた、などということになりかねません。実際、店先でラックに吊された袋の中で花が開いてしまっているのを見かけることがあります。これらの球根草花は植え付けの適期が短く、掘りあげて乾燥貯蔵するような扱いにあまり向いていないのです。
 でも、たとえ植えつける前に花が咲いてしまったとしても、その球根がだめになってしまうわけではありません。多くの種類は花が咲いている時や終わってしまったあとでも、根が伸びていさえしなければ、支障なく植えつけることができます。中にはイヌサフランのように、乾いた球根から花を咲かせて机の上などで楽しむことがふつうに行われているものさえあります。もちろん花が終わったあと植えつけて、うまく球根を育てれば、来年も同じように楽しむことができるのです。
 1年前にここでご紹介したヒガンバナは、夏に植えて秋に咲く球根草花の代表的なものです。「葉見ず花見ず」の別名のとおり、突然花茎だけが固い地面を突き抜けて伸び始め、数日であぜ道などを真っ赤に染め上げます。ヒガンバナの仲間はたくさんありますが、どの種類も花の咲く時期こそ違え、まったく同じような咲き方をします。掘りあげてしまっておいた球根からも時期が来れば次々に花茎を伸ばしてきます。葉は花が終わったあと間もなく、あるいは種類によっては翌春に伸び始めて、消耗した球根を再び太らせ、翌シーズンの開花に備えます。
 最近はヒガンバナの仲間の学名であるリコリスLycoris)という名で日本で改良されたいろいろな品種の球根を店頭や通販のカタログなどで見かけます。もともと日本原産の植物だけに栽培は容易で、ちょっと深めに植え込んでおけば、数年はほったらかしでかまいません。
ヒガンバナ(Lycoris radiata)とシロバナヒガンバナ(Lycoris albiflora)
日本の秋を彩る代表的な球根草花のヒガンバナ(Lycoris radiata)。シロバナヒガンバナ(Lycoris albiflora)との紅白のコントラストが美しい。
ナツズイセン(Lycoris squamigera)
ヒガンバナの仲間でもっとも早く夏の間に咲くナツズイセン(Lycoris squamigera)。球根は大型で、丈も高くなる。
Bloom Field
株式会社アイ・アンド・プラス Bloom Field事業部